何か皆様にご紹介する意味を感じた作品集

何万冊の中から私の目に留まり、私のお財布から何がしかの投資を引き起こし、さらに途中で投げ捨てないで最後まで読了するという条件をクリアし、何か皆様にご紹介する意味を感じた作品達です。

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世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか
(2008/01/18)
岡田 芳郎

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この本を紹介してくれたのはかって私が勤めていた会社のオーナーであり、大学の先輩でもある方で、大変頭の回転が速くアイディアに富み、社内の会議での凡庸な発言を唾棄するように嫌った方で、日々上司として仕えるにもそれなりの緊張感が必要な方でした。この先輩は山形酒田の地元企業をパートナーとして事業を展開しておられたのであるいはこの本にでてくる映画館やレストランを知っていたのかもしれませんが、主人公佐藤久一はいかにもこの先輩好みの都会的で斬新な企画力に富み独断専行の大変魅力的な人であったようです。
弱冠20歳で親から映画館経営を引き継いだ久一は、上映作品の選択に独特の嗅覚をしめしただけでなく、内外装や音響効果に金をかけ、仕出し料理をとりながら映画が見られる個室や女性に受け入れられるような清潔なトイレの設定、しゃれた案内係や定期冊子の発刊など次々にアイディアを実現させ、彼の経営する映画館グリーンハウスはついに週間朝日で淀川長治に世界一といわしめるほどのものになっていったのです。
そこまでグリーンハウスを育て上げた久一は次は劇場をやりたいと恋人をつれ東京にでて日生劇場に勤めてしまいます。ところがすでに名映画館経営者として著名でもあった久一は日生劇場側の上司からすれば煙たく、劇場の地下にあったレストランアクトレスの食堂担当に異動させられてしまいます。ここで後に彼の経営するレストラン欅やル・ポットフーで開花する仕入れや食材への眼をやしなうことになります。(アクトレスの隣にはヨーロッパの古いレストランにはよくあるようにバーがあって、レストランの席があくまで食前酒を飲んでいたりできるようになっていました。中央にはしっかりした半楕円の重厚なカウンターがあり、なかには武田さんというこれも銀座では古参のチーフがいて常連さんにしっかりとした目配りをしていました。このバーとチーフがそのまま使われて武田鉄也がでたサントリーの洒落たCMがありました。私はこの武田さんに美味しいドライマティーニとはを教えてもらいました)
 やがて父親によびもどされた久一は、はからずも新事業としてレストラン経営を任されることになります。昭和42年のことです。ここでも久一のセンスと企画力が充分に発揮され、地元酒田の豊かな食材を活かしたレストランは瞬く間にグルメの開高 健や丸谷才一に激賞されるほどになっていきます。
 久一はもともと映画館経営にしてもフランスレストランにしても全くアマチュアであるにもかかわらず、自らのセンスや企画力でそれまでの専門家が実現できなかったような映画館や料理店を創造していったわけです。贅を凝らしすぎて赤字となり最後には経営者としての地位をおわれることになりやがて食道癌に倒れることになるのですが、最後まで見果てぬ夢を追い続けられたまことに幸せな男の生涯を知ることが出来る一冊です。(タイトルの「なぜ忘れ去られたのか」は適切ではないと思います)
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